彼の意志

「ライガット!?」

彼が担架で運ばれてきていた。どうもサクラ隊長にしごかれたらしいとのこと。

恐らく妙な気合だけで空回りしたといったところだろう。ほんと彼らしいと思う。

 

「う・・・頭がぁ・・・・くそがぁ・・・・・あのババァ・・・・」

呻きながらもサクラ隊長を罵倒する言葉がぶつぶつと発せられていた。思ったよりも元気そう。

「大丈夫?」

「あー?・・・シギュンかぁ。ちょっと頭が・・・」

でもやっぱり衝撃は大きかったようでつらそうに顔を歪ませている。

「彼を彼の自室にお願いします。」

運んでいた兵士に告げると不思議そうな顔をされた。

「医務室に運ばなくてよろしいので?」

「ああ、この程度彼なら大丈夫でしょう。後で部屋に氷嚢でも届ければ良いですから。」

何か同情やらなにやらをこめた目で彼を見て、わかりました、と告げると兵士は彼を運んでいった。

 

さて、私も動こう。

「すいません。私はちょっと用事が出来たのでこれで失礼します。」

「え?シギュン様?」

一方的に魔道技師の仲間に告げると職場から離れる。

目指すは医務室。彼へ届ける氷嚢を取りにいくために。

 

 

 

 

コンコン、とノックの音がシンと静まり返った廊下に響く。

それからゆっくりと彼の部屋へと繋がるドアを開ける。

彼は・・・・いた。案の定ベッドの上でぐったりと仰向けに寝転がっている。

「おーシギュンか・・・。わりぃ今ちょっと頭が痛くて・・・」

「うん、知ってる。だから・・・ハイこれ」

ベッドに近寄って彼の額に貰ってきた氷嚢を乗せる。

「おおっ・・・気持ちいい~・・・サンキュー」

幾分かは楽になってくれた様子。苦しそうな表情が少しやわらいだ。

それから彼の邪魔にならないようにベッドの横に座る。

 

「ゆっくりでいいから話せる?」

「うん?・・・あー大丈夫だ。」

無理させてはいけないとは思うのだけれどどうしても聞いておきたかった。

「なにがあったの?」

「サクラってゆーバ・・・オバサンにさ、・・・イーストシミターの使い方を・・・な」

「イーストシミターを?」

 

イーストシミター。それは石英を切断できる武器。

基本叩き・削り合いが戦いのメインとなるゴゥレムの戦闘において、あえて斬ることを主とした武器。

あらゆる武器の中でも最速を誇る分、耐久力が一般の武器よりも少なく扱いにくい。

そんな武器を彼はサクラ隊長から教えられているという。

 

「どうしていきなり?」

「前言ったかもしれないけどさ・・・ほら、お前の顔をつまんで伸ばしていじってたじゃん?その後にさ」

そういえば、『あいつは斬れたのに・・・俺は斬れなかった』と呟いていた気がする。

「ジルグと戦ったのは知ってるだろ?」

「うん。出陣するバルド将軍たちを見送って戻ってくるところを狙われたって」

「あのときにあいつにイーストシミターを使われて盾を斬られたんだ。けど俺が奪い取って使ったらあいつのランスを斬れなかった。」

イーストシミターは素人には扱える代物ではない。普通の武器と同じようにがむしゃらに使えばすぐ壊れるだろう。

彼がイーストシミターを使えないのは当たり前なのだ。

「だからさ、強くなるために・・・必要だと思ったんだ。」

 「ライガット・・・」

そうだ。彼は今では兵士。お気楽な学生なんかとは比べ物にならない重さがある。

いくらデルフィングという特別な機体に乗っているからといって死なないとは限らないのだ。

「強くなって、生きて帰ってくるためにさ。・・・・・・おーい、また仏頂面して・・・」

つんつんと彼の指先が私の頬をつつく。また表情が固まってしまっていた。

「前にも言ったけどさ、なんとかなるって。な?」

もうすぐ戦場へ向かう者とは思えない明るい表情だった。

 

 

話を終え眠りついた彼の顔をじっと眺める。

どことなく苦しそうな表情も薄れ顔色も良くなった気がする。

「なんとかなる・・・か」

彼が告げた言葉を呟く。

眠る彼の頬をつねる。丁度以前彼が彼女にしたように。

「まったく・・・・・かっこつけすぎ。・・・・バーカ」

 

 

彼女は、笑いながら、そう言った。

 

 

 

 

 

あとがき

ほのぼのなのかシリアスなのかちょいと判断に困るものを書いてしまった。

結局、ライガットとシギュンを書きたかっただけですけどね!